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「組織変革のビジョン」 金井壽宏著 光文社新書

この本も新潟大学の先生方からご紹介いただいた本のひとつである。

いや、参った。

ほとんどすべてのページに、誰々がこういうことを言っている、誰々はこういう主張をしている、誰々はこの現象をこう呼んだ、というような引用が散りばめられている。

著者は「本当に変わるためには知性が要る」というが、まさにこれだけの生きた知識があればなあとうらやましく思う。

素晴らしいのは、言葉の意味を正確に伝えるために、慣習となっている翻訳を敢えて使わない配慮や、言葉のセンスである。

例えば、コッターの「ビジョン」と翻訳される部分をあえてカタカナのまま「アジェンダ」にしていたり、人の成長の「ここぞというとき」の「大きなジャンプ」を「一皮むける」という表現で表したり、著者自身が主張する変革における「言語化」の重要性をまさに実践している。

「変革には抵抗はつきもの」であり、変革しようとするものにとって避けては通れない。著者は、「組織変革を阻むもの」の中で、変革者に対して、ひとつの処方箋を示してくれる。

そのような抵抗に出会ったら、想定される抵抗のリストを見て、この抵抗は「なるほど、そうか」と一部でも納得できる部分が発見できれば、「少しは腹の虫もおさまる」と。

確かに、「計画のグレシャムの法則」など、まさに直面している課題であるし、そういうものかと納得すれば、そのまま惰性で流されてしまうこともなくなるに違いない(と信じたい)。

想定読者としては、やる気のない人には向かないが、やる気のある変革者にとっては、文中の引用も豊富であるし、さらに勉強する足掛かりになろうだろう。

 

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