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「グローバリゼーション」 マンフレッド・B・スティーガー著 櫻井公人ほか訳 岩波書店

グローバリゼーションの入門書である。

IT技術による経済現象のグローバル化や世界的な環境問題としてしかグローバリゼーションを見ていなかった自分には、この現象を観察する上でのいくつかの「多次元的な」見方を与えてくれる教科書である。

本書は、グローバリゼーションの定義から始まり、グローバリゼーションは新しい現象なのか、過去にもあった現象なのかといった点から歴史を振り返る。

次に、経済的次元から、ブレトンウッズ会議、新自由主義、多国籍企業の台頭を概説して、経済的相互連結の強化に及ぼす政治的決定の重要性について述べている。

以後、政治的次元、文化的次元、エコロジー的次元と説明が続き、グローバリゼーションのイデオロギーの章では、「地球規模での市場の自由化と統合」が「自然な」現象であることや、「不可避で非可逆的」であることなどが、実は、市場派グローバリズムというひとつのイデオロギーの主張に過ぎないことを明らかにする。

また、このようなイデオロギーに対抗する、一見、私にはグローバリゼーションに反対しているように見える人々の言説や行動も、正義派グローバリズムや聖戦派グローバリズムといったグローバリゼーションのイデオロギーであり、グローバリゼーションの概念には、いくつものオルタナティブにより特定の価値と意味を与えることが可能であることを示している。

最終章では、カール・ポランニーの20世紀前半の世界的危機の分析が、現在の状況にも適用可能であることが述べられ、今後に一抹の不安を覚える。

参考文献も多く掲載されている。