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「ピアニストの脳を科学する超絶技巧のメカニズム」 古屋晋一著 春秋社

自らも幼少期のころからピアノを習い、手を痛めてしまった経験から、「音楽演奏科学」という学問の確立を志すことになった著者の力作である。

ピアノの練習が脳の構造にどんな変化をもたらすか、また、過度の練習による脳構造の変化による病気のことなど、いろいろな診断機器や分析手法によって得られた知見が面白い。

プロのピアノ演奏者は、長時間の演奏に耐えるような、省力化された動作を身に着けており、重力の利用やしなりの利用など、武道にも通じる動きがあり、たいへん興味深く読ませてもらった。おかけで分からなかった武道の技のヒントが得られた。

また、長時間の演奏や高速演奏を可能にするための記憶のチャンク化や脳構造の変化による処理能力の向上は、名人とか達人といわれる人たちに共通する点であるが、普通の人が何かを学んだり修得したりする際の学び方の戦略を考えるのにも役に立つと感じた。

「音楽演奏科学」という学問は、音楽という限定された分野ではあるが、一般の人にも有益な脳科学の知見が得られると予想され、今後の発展に期待したい。